久しぶりの世田美

久しぶりに世田谷美術館に行きました。

欲張って4つの展示を楽しんできました。

まず、「暮らしと美術と高島屋」展。

これは、〈文化装置としての百貨店〉という視点から、

高島屋の文化活動の歴史とその役割を紹介したユニークな展覧会です。

視点としてはなかなか面白い企画だとは思いましたが、

なんだか『高島屋」の宣伝活動のような印象も受けました。

 

確かに「百貨店」は、日本の消費文化を牽引してきた特別な存在です。

人々の暮らしや嗜好を先取りし、芸術を大衆文化として広めてきた百貨店の功績は、

大いに評価されるべきですが、展覧会としては、やや物足りない感じがしました。

それは、公立美術館の展覧会の限界かもしれませんが、もっと大衆文化という

視点を全面に出したダイナミックな展示であってほしかったです。

民藝運動と百貨店というようなテーマももっと掘り下げてほしかったです。

 

「ミュージアム・コレクション」の「柚木沙弥郎 いのちの旗じるし」は

素晴らしい展示でした。

柚木さんの作品はプリミティブアートのような大らかさと

力強さをもちながら、現代性があります。

どことなくユーモラスな、リズミカルで大胆な造形、

豊かな色彩感覚の染色作品には、いつも感銘を受けます。

それにしても、絵本『魔法のことば』は、ぜひとも復刊してほしいですね。

 

さらに、ミュージアム・コレクションの小コーナーで展示されていた

土方久功の作品もよかったです。以前、大きな展覧会が世田谷美術館で

開催されたときも夢中になって観ましたが、やはりすごい作家です。

4冊の絵本『おおきなかぬー』、『ゆかいなさんぽ』、

『ぶたぶたくんのおかいもの』、『おによりつよいおれま-い』は、

どれもずっと心に残る、大好きな作品です。

 

そして、最後に観たのが区民ギャラリーで展示されていた

山崎曜の「手で作る本の教室」展でした。

これが、実に面白かったです。

「もの」としての本へのこだわりをもった人たちが

山崎曜さんの指導のもと手で装丁、製本をした「作品」が

ずらりと展示してありました。

「本」というものを突き詰めて考えていくと、

このような造形になるのかと大変興味深かったです。

どれも手で作られる物のもつ温かさと美しさにあふれていました。