「夜の木」制作現場へ(チェンナイ)

アルムガムさんの運転する車で、いよいよ「夜の木」を制作している現場へと向かいました。

Tara Books から幹線道路を南下し、途中から横道に入り、舗装されていない細い道をどんどん進んでいくいきました。

 

牛が歩いていたり、犬が寝そべっているような、ほこりっぽい道をしばらく行くと、アルムガムさんのホームグランドともいうべき工房、AMMスクリーンズがありました。

辛子色の建物(写真)がそうです。

 

工房の中では、15人ほどの若い職人さんたちが、もくもくと作業をしていました。ここで、「夜の木」や Waterlife などのハンドメイド絵本の傑作が生み出されたのです。

シルクスクリーンの印刷台が、いくつもあり、3人がひと組となって

印刷作業をしていました。

一人が紙をセットし、一人が刷り、一人が刷りあがりをチェックして

乾かすために木枠で組んだ台に並べていました。

実に手際良く、集中して、作業をしていました。

無駄話などすることもなく、淡々と。

 

シルクスクリーンは、パソコンに保存された画像を呼び出し、

色ごとに別々のフィルムにして、それをスクリーンに焼き付け、

それぞれの版をつくります。

それを謄写版のような印刷機で一枚一枚刷っていきます。

もちろんインクも特別のものだそうです。

なんだか、大掛かりなプリントごっごみたいです。

一度作った版で、4,000 枚が印刷可能とのことです。

 

この工房では、印刷だけでなく、製本も行います。

一冊ずつ糸でかがり、表紙を糊貼りして、本に仕上げます。

すべて手作業です。

 

僕たちが訪ねたときには、丁度、日本語版の第2刷の印刷が

追い込みにかかっていました。

目の前で、日本語の文字が印刷されていくのを見るのは不思議な気分でした。

インクの匂いが立ち込める、薄暗い工房の中で、

こんな風にして「夜の木」が出来上がっていくのかと思うと、

感無量でした。

 

この工房は、アルムガムさんが率いる職人たちの共同体で、

大きな家族のような感じす。

だからこそ、そのチームワークは見事なのです。

アルムガムさんは、このチームを大切に育ててきて、

今のところ新たに人を加えようという気はないようです。

そして、仕事はたくさんあるのに、この工房の規模も

大きくするつもりはないそうです。

手を広げていけば、高い品質を保つことが難しくなるということを

彼はよくわかっているのです。

 

アルムガムさんの住まいは、この工房に隣接していて、

工房の奥のドアを開けるとそこは彼の住居でした。

庭のヤシの木から実をとってきてくれて

ヤシの実ジュースをごちそうしてくれました。